ビジネス関連の記事を読んでいると、きちんとした中国名はあるのに、欧米風の名前を名乗っている中国人ビジネスマンが少なくないようだ。一番有名なのはアリババのジャック・マー氏だろう。
以前読んだ記事だと、普通のビジネスパーソンでも「ティファニー」や「キャシー」というような自分の好きな英米ネームで名乗る中国人が結構多いようだ。
中国に留学していた友人Aさんに聞いたところ、外国人と接する機会のある中国人のほとんどの人は欧米流の名前、イングリッシュネームを付けているとのことである。中国語そのままの発音だと発音しにくい、イングリッシュネームがあったほうが外国人に覚えてもらいやすい、自分で好きな名前をつけられるというのが主な理由だとか。
自分でよいイングリッシュネームを思いつかない人は、英語学校の先生や英語の堪能な中国人につけてもらったりするのだとか。なかには「ビーナス/Venus」などというキラキラネームをつけてもらう人もいるようだ。
このイングリッシュネームをつけるという風習は実に興味深い。
その昔、ぼくが駅前留学で英会話を習い始めたころ、教室内ではお互いにニックネームで呼び合うように言われて面食らった。そんなこっぱずかしいこと、参ったなあと思ったが、きまりはきまりで、当時はやっていた映画『レインマン』にあやかって「チャーリー」というニックネームをつけてみた。
しばらくは慣れなかったが、しかしいったんニックネームで呼び合うようになると、「○○さん」「××君」と呼び合う日本語の体系の中の「年齢差による微妙な関係性」「仕事の役職に伴う位置関係」みたいなものから解き放たれたような自由さを感じているのに気付いた。
もちろん英語にも敬語や丁寧表現はあるが、non nativeであれば母国語である日本語ほどとらわれずに済む(というかそこまで気が回らない)。
英米ネームで呼び合う中国人の気持ちの背景に、「中国語体系の中に内在する、年齢差・性別・役職などにともなう細かいしがらみ話法」から自由になりたいというものがあるのだろうか。
そういえば、以前に楽天は英語を社内公用語としたことでニュースになった。
楽天社内では、やはりイングリッシュネームをお互いにつけあったりしているのだろうか。楽天が英語を社内公用語としたことはネットでもさんざんネタにされているが、日本語を使わないことで思考の硬直性から社員を解き放とうとしたのならば面白いアプローチだと思う。やるなミッキー。