今日のネタ帳

悪ふざけの話中心です。笑っていただければ幸いです。

「感動で涙がとまりません」という人、必読。

ネットのいい話系の粗製乱造記事や映画のCMとかでよくみる表現で、「感動で涙がとまりません」ってコメントの連発がある。

あれを見るといつも大丈夫かなと心の底からとても心配になる。

詳しく言うと、「涙がとまらないというのはどのような病気だろうか」と思うのだ。

 

「涙がとまらない」状況としてはいくつかの原因が考えられる。

ぼく自身の専門分野である脳神経の領域では、末梢性顔面神経麻痺、いわゆるベル麻痺の後遺症の可能性がある。

一過性に顔面を動かす神経が麻痺してしまうのが末梢性顔面神経麻痺だが、回復過程において神経のつながり具合が狂うと、食事をしたときに涙が出る「ワニの涙現象/crocodile tear phenomenon」が起こる。

「涙がとまりません」という人たちも、なんらかの機序で同様の現象が起こっているのかもしれない。

 

「涙がとまらない」原因のもう一つは鼻涙管のつまりだ。

人体には鼻涙管(びるいかん)という器官がある。目と鼻をつなぐ細い管であり、目でつくられた涙を鼻に流す働きを持つ。この鼻涙管がつまると涙が止まらずに涙目になったりする。
治療法は細い金属の管・ブジーを鼻涙管に挿入し、その後シリコンチューブ入れてまたつまらないようにする。

この治療法、ブジー法は目に金属の管を入れるので痛みを伴うから、安易に感動を安売りしたりしないほうがいいのではないだろうか。

 

以前にアメリカの映画で、鼻から二本細い管が突き出ている人が出てくるシーンがあったように記憶している。話の筋は忘れたが、昆虫型の異星人と戦う話だったように思う。

あれはおそらく鼻涙管の治療中にもかかわらず戦闘に駆り出されているという描写なのであろう。未成年を表現するのに「まだ歯の矯正も終わっていない年齢」といったりするのと同じように、「涙がとまらない鼻涙管の閉塞」という重病にも関わらず異星人との戦闘を強いられるという様子を描くことで、戦争の悲惨さを訴えたのだろうか。

いつの世も、戦争で被害を被るのは弱い者たちだ。

 

話を「涙がとまらない」病気に戻す。

友人の眼科医にも聞いてみたところ、最近では涙点プラグという治療法もあるという。

涙点プラグというのは涙の出入り口である涙点をプラグでふさぐというもので、涙点は左右の目上下に二つずつある。

本来ドライアイの治療法であるが、あえて涙の出入り口をふさぐことで、「涙がとまらない」困った状況を改善することができるはずである。

 

いずれにせよ、「感動で涙がとまりません」というのは異常事態であり、なんらかの治療が早急に必要な状態だ。

政府が本腰を入れて治療を促さなければ、これからも被害者は増えるばかりである。

世論が政府を動かすことを切に期待し筆をおく。